鬼のべっこう飴
母が、頂き物の飴を分けてくれました。
懐かしいべっこう色をしたこの飴、なんと足の形をしています。
「節分だから鬼の足なんだって!」と母。
それにしたって、なぜ足……。どこで作られたのだろう?
いくら尋ねても
「節分だから鬼の足」
以外の情報を母から受け取ることはできません。
珍しい形状に興味をひかれてネットで調べてみたところ、どうやらコレ、非常に有名な飴のようですね。
正しい商品名は「鬼のあしあと」といって、京都の老舗豆菓子店で製造されているそうです。なるほど、もともと豆を扱っていた流れで、節分の鬼にちなんだ飴を売ようになったのでしょう。
なぜ足の形にしたのかまでは分かりませんでしたが、幅広の丸みのある足型は、とってもキュート!良いモチーフだなぁと見とれつつ、この飴は、大豆や鬼の面と共に部屋に飾りました。
2月には節分、3月には雛祭り、8月にはお盆……。日本には、季節ごとに実にさまざまな行事がありますよね。そんな年中行事を司る物を飾り、心を託すという「室礼(しつらい)」が、大人になるとしみじみ楽しく感じられます。
10年ほど前に、多くの著書を出していらっしゃる室礼研究家・山本三千子さんのお話を伺ったことがあります。28年前に山本さんは突然ご主人を亡くし、なかなか抜け出せない絶望の中にいたそうです。それでも季節ごとの行事をご自宅で済ますたびに、少しずつお気持ちが落ち着き、心がスッキリされたのだとか。
この体験が室礼を研究されるきっかけとなったそうで、とても印象的なエピソードとして覚えています。自分がどんなにシビアな状況におかれていても、時の流れを感じながら、ほぼ決められている型の作業を繰り返すうちに、きっと心は修復され、リセットされていくものなのだと。
ちなみにこのことは、非日常的ハプニングが頻出しても、主人公が淡々と部屋を掃除したり料理したりすることで自分の内面を保つ(ように見える)、村上春樹の小説につながる感覚もありそうだと個人的には感じます。
話がたいぶ逸れましたが、そういうわけで、私は大人になった今だからこそ、季節の行事を大切に、サボらずにやっていきたいと思うのです。雛人形や茄子の牛を飾っていると、遥か遠い昔の人々の祈りや願いが感じられます。
そして何より、こうした豊かな日本の伝統文化を、次の世代にも残していきたいのです。
さしあたって、来月3日の節分ですね。この「鬼のあしあと」は、豆まきをした後で、家族の健康と幸福を願いながらいただくつもりです。
「鬼を食べたら、“ 鬼は内 ” にならないのかな…」という、そこはかとない不安は、この際あまり深く考えませんっ。
鬼をやっつけるイメージで、パクッといただきます!